2月8日は春節、Chinese New Year Dayだ。横浜の中華街では8日当日から22日まで、様々な催しが行われるらしいが、オーストラリアでも各地で春節のお祝いが繰り広げられる。
中国の人たちのオーストラリア大陸への移民の歴史は古く、最初に多くの人たちが流入したのは、1850年代のオーストラリアのゴールドラッシュの時である。近年では、天安門事件の後、また香港返還の際に多数が移民。また21世紀に入ってからは、中国の経済発展が後押しし、留学生やビジネスマンなど新たな形の移民が増えている。
そのような歴史を背景に、各地にチャイナ・タウンがあるし、例えばシドニー近郊ならハーストビル、メルボルンならボックスヒルと言った、チャイナ・タウンという括りではないが、圧倒的に中華系の住民が多い街があり、そういったところを拠点に春節を祝う行事が行われる。そしてそれは、メディアも大きく取り上げるので、中華系の人たちの枠を越えて、広くオーストラリア社会で認識されている。
面白いのは欧州系のオーストラリアの人たちの中にも、自分の干支を知っている人たちがチラホラいることだ。その干支の意味とか、それは12年に一遍回ってくるものなのだ、などという細かいことはさておき、自分はウサギだとか、羊だとかを覚えている。恐らく動物なので親しみがあって、覚えやすいのだろう。
ということで、今年の干支の「申」だが、サル、と言って私が思い出すのは、昨年の「子猿命名騒動」である。大分県の高崎山動物園で生まれた雌の子猿を、動物園が直前に生まれた英国王室のシャーロット王女に因んで「シャーロット」と名付けたところ、それは英国王室に対して失礼だろう、という声が上がり、命名がとん挫。しかしながら、英国王室の広報が「赤ちゃんザルにどんな名前を付けようと、動物園の自由」と取材に答えた辺りから事態は収束し、晴れて子猿はシャーロットとなった。
私はそもそも、この一件の問題の所在が理解出来なかった。シャーロットは一般の女の子の名前なので、王族しか使ってはいけないということはないだろう。付けたのが猿だったのが不味かったのだろうか。そんなことを思い巡らしていた時に遭遇したのが、シャーロット王妃のお兄さん、ジョージ王子の名前に因んだ施設が、シドニーの有名なタロンガ動物園にオープンした、というニュースだった。
2014年4月、ウィリアム王子、ケイト妃と共にオーストラリアを訪れたジョージ王子。タロンガ動物園で王子と同じジョージという名のビルビーという動物とご対面。王子の名を冠した新しいビルビー舎の除幕式に立ち会った。ビルビーはオーストラリアに特徴的な動物、有袋類の一種だが、絶滅危惧種であり、その保護、繁殖プログラムに新施設は寄与することになる。そのニュースはとても微笑ましい話題として流された。王室と動物、動物園のリンク、全く問題なし、である。
因みに年明けに目にしたニュースによると、子猿のシャーロットはすくすく育っていて、年初に結果発表があった高崎山動物園の猿の“総選挙”では断トツで一位になったのだそうだ。将来シャーロット王女と子猿のシャーロットが対面することがあったら…。何だかそれも微笑ましい話のように私には思えるのだが。