ベトナム旧正月「テト」から見える国民性

    ベトナムでは中国と同じく旧正月があり「テト」と呼ばれます。

    テトは旧暦によって毎年変わりますが、2016年のテト元旦は2月8日、今年のテト休暇は7〜14日9連休と長く、ようやく今週から日常に戻りつつあります。テトは、政府から毎年発表があり、日程が年によって変わりますが、ベトナム人にとって1年間で最も重要な祝日であり盛大にお祝いされる大切なイベントなのです。ベトナムは祝日が少なく、このテト休暇は貴重な長い休暇でもあります。普段、多くのバイクで行き交う賑やかな街もゴーストタウンのような状況になり、ほとんどの人が田舎に帰り、遠く離れた家族が一同に集まって、のんびりと一緒に過ごすことを大変楽しみにしています。「テト」は先祖に敬意を表し、家族の結びつきを強める大切な時間なのです。

    この「テト」を注目するだけでも、私たち日本人がベトナムでビジネスする上で、様々な背景がみえ隠れし、多くのヒントがあります。

    まずはテト1ヶ月前位から帰省できることが嬉しく、ベトナム人はソワソワとし始め仕事がはかどりません。また日本の年末のように、ご挨拶に行ったり来たり、忘年会のようなパーティーなど集まる行事も多くなります。ベトナム人は人と人の繋がりを大切し、おしゃべり好きでもあるため、昼も夜も飲んだり食べたりすることが大好きでこの時期は特にお付合いが頻繁になります。テト商戦も始まり、1年で一番の消費力がある時期でもあります。久しぶりに田舎に帰るため、お土産を買ったり、身なりをキレイにしたり・・田舎から都心に出稼ぎや進学に出てきている人が多く、久しぶりに故郷へ帰る時には、家族に対して最大限のアピールをします。やはり祖父母や親に「離れていても頑張っている」という安心感を与えたいのです。ベトナム人は家族を何よりも大切にし、家族からの影響力が非常に強いようです。

    ベトナム人を雇用する上でも、本人だけでなく家族に対して、少しの気配りをするだけで、様々なことが円滑に進めることができるでしょう。

    多くのベトナム企業は、このテト前に年に1度のボーナスを出します。そのボーナスは家族のためなのです。逆にこのテトを期に、辞めていく人も多く見られます。少しでも多く故郷で家族と一緒に過ごしたいという思いから、 休暇が思うように取得できなかったり、仕事や賃金に不服があれば、テト前に退職し、思う存分休みをとってから新しい職場を探します。

    ベトナム人は『今』を優先する現実主義の方が多いように感じられます。しかし、家族のように向き合い、公私ともに長くお付合いができるような信頼関係がしっかり結ぶことさえできれば、様々な局面で心から助けてくれる情け深さを持ち合わせています。

    日本では希薄になってきている人間関係ですが、言葉が通じ合わないとしてもベトナム人を理解しようという気持ちをもって接するだけで、何かが大きく変わるのではないでしょうか・・・日本人が忘れつつあることを思い出させてくれるはずです。