河北雄安新区は中国諸改革の起爆剤として期待

今年4月、中国共産党中央委員会、国務院は河北雄安新区建設を承認した。

先日、北京市常任委員会は拡大会議を開催し、『河北雄安新区に現在需要のある保健医療、教育、科学技術、などの良質な公共サービスを提供する』と述べた。 北京市政府は、河北雄安新区に対してサポートとサービスを強化していく。

良質な公共サービスの推進や改革は、河北雄安新区発展の保障ともなりえる。 行政によるサポートとサービスの強化は、河北雄安新区の投融資を促進し、長期的に安定した資金流入の仕組を構築し、河北雄安新区への誘致につながる。

河北雄安新区は、国家プロジェクトとしては19番目の経済特区となり、深圳経済特区、上海浦東新区と匹敵する規模となる。 中国共産党中央委員会、国務院の双方からの承認による経済特区は初めて。

新華社によると「中国共産党中央委員会と国務院は、河北雄安新区の設立を決めたと通知した。これは習近平同志を核心とする中国共産党中央委員会が打ち出した重大な歴史的戦略プロジェクトであり、深圳経済特区、上海浦東新区に次ぐ全国的な意義を持つ新区である」と報道。

北京の非首都機能移転は、習近平国家主席が主張する「京津冀一体化」推進の最重要ポイントとなっている。

北京は、人口が2,100万人を超え、2020年に設定している人口調整目標2,300万人に迫る人口過密地域で、水不足、大気汚染、渋滞、住宅不足、などの問題が発生しており、併せて政治経済の北京への集中もリスクである。 河北雄安新区をきっかけとした地域開発により、諸問題の解決や、リスク分散、改革の推進などが見込まれる。

習近平国家主席は、河北雄安新区開発に向けて7つの重点任務があるとしている。

①環境対策に優れた先進的なスマートシティの構築

②水や自然豊かな生態系が保護された環境の構築

③高度な最先端産業の育成による経済発展

④都市発展に必要な良質な公共サービスの提供

⑤エコで、移動効率が高い交通ネットワークの構築

⑥行政体制の改革の推進

⑦規制緩和や交流の仕組を構築し対外開放の強化。

現在地域の開発が進んでいなく、複数の高速道路や鉄道などの社会インフラが既にあり、資源の豊富さなど、今後の成長余地の大きさが地域決定の要因となっている。 比較的経済成長が遅れている地域でもあり、第二次産業の割合が全国平均を大きく上回り、産業構造の転換を迫られていた。

河北省雄県、容城県、安新県とその周辺が河北雄安新区として指定され、初期開発面積は約100㎢、開発中期では200㎢、将来的には2,000㎢に開発が広がる予定である。 河北雄安新区は、北京と天津から約120㎞の場所にあり、北京と天津の間も約120㎞あることから、それぞれの都市経済を発展させ、各都市を頂点とする北京、天津、河北雄安新区を中心とした河北省の一体発展による経済デルタに繋げていく狙いもある。

インフラと環境保護に課題はあるものの、政府主導で注力しているプロジェクトだけに、公共サービス強化や、インフラ拡充、なども進み、これまでにない勢いで開発が進むことになりそうだ。

既に、雄県不動産都市建設局は、「商品不動産販売に関する警告に関する通知」を発表。 雄県、容城県、安新県では、全ての不動産取引が現在停止し、行政と公安により不動産投機の発生防止に努めている。

河北雄安新区開発に向けての取組みは、現在中国が進めている地方開発や改革開放への取組みを凝縮したものとも言える。 今後の課題や成功のへの分かれ道は、国有企業以外の民間先端企業やベンチャー、外資系企業、などの進出結果によるだろう。

珠江デルタ、長江デルタ、などの南部の経済発展に比較して遅れている北部発展の起爆剤となり、地域発展の格差を補填することに期待したい。